
こんにちは。神戸日帰り外科そけいヘルニアかずクリニック院長の藤木和也です。
今週になって急に暖かさを増し、春らしい陽気となってきました。
週末あたりから眼がしょぼしょぼする感じがしておりましたが、これは花粉症の影響のようです。
花粉症の皆さん、大変なシーズンとなってきましたが、一緒に頑張って乗り越えましょう。
さて、今回は手術のお話となります、「鼠径ヘルニアの治療~鼠径部切開法~」についてお伝え致します。
鼠径部切開法とは、腹腔鏡を用いない鼠径ヘルニア手術のことをいいます。
一般的な方法として、鼠径部の皮膚のしわ(皮膚割線)に沿って横に約4〜5cmの切開し、ヘルニアの原因であるヘルニアの穴(ヘルニア門)の修復を行うという手術になります。
ヘルニア門の修復に、網目状の人工シート(メッシュ)を用いる「メッシュ法」と、メッシュを用いず自身の組織でヘルニア門を締める「組織縫合法」があります。
組織縫合法の中でも、縫合する組織によって術式が分けられており、「iliopubic tract法」や「Marcy法」、「Bassini法」、「McVay法」、「Shouldice法」などに分けられています。
また、メッシュ法では、ヘルニア門へのアプローチの仕方や、どの層にメッシュを留置するかによっても術式が分けられており、「Kugel法/Direct Kugel法」、「Bilayer法」、「Plug法」、「ONSTEP法」、「Lichtenstein法」など、さまざまな分類がされています。
多すぎて名前を覚えるだけでも一苦労です。
19世紀より組織縫合法が行われていたようですが、自身の組織にて修復するため組織に緊張がかかってしまい、引きつれた感じや再発の多さが問題とされていました。
そこで、緊張をかけない方法としてメッシュによる修復が考案され、1956年にメッシュを使った鼠径ヘルニア手術が登場します。
その後、低侵襲の治療として1982年に腹腔鏡手術が初めて行われたというのが、鼠径ヘルニア手術の変遷になります。
これらは海外での話となりますので、日本で普及したのはもう少し後であり、メッシュはここ25年程度、腹腔鏡は10年程度と、比較的新しい治療となっています。
また最近、人工物を使用しないという利点があることから、組織縫合法の評価も見直されつつあります。
当院の第一術式は1か所の切開から行う「単孔式腹腔鏡手術」になりますが、癒着などで腹腔鏡手術が困難な場合は、「Lichtenstein法」を行なっています。
鼠径部切開法において、日本のガイドラインではどのメッシュ法も同じ扱いですが、国際ガイドラインではLichtenstein法が唯一の標準術式となっているということが理由になります。
各術式の詳細をお知りになりたいという知的好奇心をお持ちの方は、どうぞ当院にて熱く語らせていただきます。お待ちしております。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は、腹腔鏡手術についてを予定しています。
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