
こんにちは。神戸日帰り外科そけいヘルニアかずクリニック院長の藤木和也です。
ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたでしょうか。
前回の続き「鼠径ヘルニアの治療~腹腔鏡手術~」についてお伝えします。
成人の腹腔鏡による鼠径ヘルニア手術は主に「TAPP」と「TEP」の2つに方法に分けられるということをご説明しました。TAPPはお腹の中に到達後、鼠径部の腹膜を切開し、腹膜前腔にメッシュを留置する方法であり、TEPはお腹の中に入らず、腹膜前腔、もしくは筋実質と筋肉を包んでいる皮(後鞘)の間からのアプローチで完結させる方法であることは覚えていらっしゃいますでしょうか。
お気づきの方もおられるかもしれませんが、この2つの方法はアプローチの経路が違うだけで、いずれもメッシュは腹膜前腔に留置して、ヘルニアを修復します。
それならば、お腹の中に入らず、腹膜前腔で完結するTEPのほうがいいのではというお思いになられるかもしれませんが、実情はTAPPが8割、TEPが2割と、TAPPのほうが多数派です。なぜでしょうか。
1つ目の理由として、TEPを教えられる医師が少ないということがあります。TAPPが多数派ということは、TAPPは指導ができても、TEPは難しいという医師が多いということになります。
2つ目の理由として、お腹の中の手術に慣れているということが挙げられます。鼠径ヘルニアの手術をおこなうのは、ほとんどが消化器外科医です(一部で泌尿器科の先生もなさっています)。消化器外科医はヘルニアの手術も行いますが、他のお腹の病気(虫垂炎や胆石症、消化器癌など)の手術もおこなっている場合が多く、お腹の中の手術に慣れています。そのため、慣れたお腹の中からのアプローチとなるTAPPが選択されます。
3つ目の理由は、TAPPとTEPで合併症の頻度はあまり変わらないというデータがあるためです。鼠径ヘルニアの手術は比較的安全性が高く、重症合併症の頻度が少ないということもあり、学会によるガイドラインでも、手術に習熟した外科医であればどちらの術式をおこなってもかまわないということになっています。
これらのことからTAPPが多数派ではありますが、当院ではTEPをおこなっております。
合併症の頻度が変わらないといっても、極力、お腹の中の臓器に負担をかけないようにするためです。
さらに当院では、1か所のみの傷でおこなう、単孔式手術を取り入れています。
患者さんへの負担は最小限に。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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